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オーナーのよもやま話

■第2回 ■第1回
第2回 名古屋今池奇談
名古屋今池、魑魅魍魎の町。下町というのも違うだろう、独特の雰囲気。名古屋を見わたしても似た町は他にない気がする、名駅裏・円頓寺、少し似た所もある、でも違う。
パチンコ屋が多くそれに集まる人達のムードがかもし出すのだろうか?いやそれより住んでいる人とあの独特の雰囲気が好きで足しげく通う人達が作り出す空気なのか、お世辞にもきれいとは言えない、野良猫だらけ、裏道に入ると悪臭すら漂う。でも何故か私を含め今池好きは多い。夜のとばりがおりて、いっぱい飲み屋の赤ちょうちんに灯りがともるとそれはまさにB級パラダイスの幕開け。朝方9・10時までやっている店もちらほら、私も何軒かなじみの店がある。裏道に多い小さな飲み屋はたいてい1人か2人でやっていて店主が酒も作り料理もするし客の相手もする。それゆえ店のはやり具合は店主の器に左右される。
私が行く店の店主も皆個性が強く人間味にあふれている。店の人間もさることながらそこに集う客がまた濃いのなんの、1人で飲み屋に行くと「隣は何をする人ぞ」って思う。そして飲んでいるとたまに話しかけられたりもする。時には楽しくもあるがその逆も3倍くらい(笑)。自分の武勇伝?をマシンガンのように話し続けるおっちゃん、20分間に同じ話を5回以上してくるおばちゃん、酔って同じ歌を3回も唄っているじいちゃん、などなど・・・。
辟易とすることもあるがそれはそれ、当たるも八卦の世界。たまに為になる話?や面白い話も聞ける。
私のなじみの店の中でもひときわ強烈な個性をはなっているのがゲイのおやじがやっている鉄板焼屋。この店、向かえには女装バー、横にはSMクラブとワンフロアにディープな店が入っている。そしてこの鉄板焼屋のおやじが相当のつわもの、大阪は八尾の出身で昔はきながしで踊っていたこともあると言う。その頃にサパークラブのオーナーに誘われ東京へ、一旗あげるも惚れた相手と駆け落ち(もちろん男)♪流れ流れて♪今池にたどりついたらしい。ふんだ修羅場は数知れず、聞くとそのどれもがドラマティックで面白い。オカマ家業が長いせいかやたらと芸能界にも詳しい。このマスターの話や唄を聞くだけでも楽しいが、本業の方の料理もなかなかのもので鉄板系はもちろん煮物の味付けなども抜群である。しかも嬉しいことにワインまである。
この店もしかり、のれんをくぐると色々な意味で新世界が待っている、度胸をきめて入ってみるのも一興、「しまった?」か「面白い!」はその日の運か?出たとこ勝負。郷に入ればなんとやらである。しかし最近は店の人間や客、この曲者達がかもし出す町の雰囲気もだんだん失われつつあるように感じる。この酒の猛者達はほとんどが団塊の世代より、もういっちょう上の世代。タフな時代を生き抜いてきただけあって皆驚くほど元気だがさすがによい年には勝てない。この骨太の大先輩達と肩を並べて飲めるのもそこまで長い時間ではなさそうだ。この摩訶不思議な町をそういった意味で楽しめるのは今のうちかもしれない。今年もそろそろ年末、飲む機会も増えるだろう、今池という名のB級パラダイスでハーデストナイトに身を投じてみてはいかが?




第1回 シャンパンと言う名の泡
泡・ガス、昨今飲み屋でそんな欲称で呼ばれている飲み物、何を隠そう私も大好物のシャンパンである。ワインもいいがやはりブドウ酒の中で一番好きなのはシャンパン。シャンパンとは厳密に言うとフランスはパリの東150kmに広がるシャンパーニュ地方でのみ生産された物だけに許される名称。だがフランスのその他の地方やイタリア、スペインその他の国のスパークリングワインも日常生活の中でシャンパンと呼んでもさしつかえあるまい。
シャンパンと言うとお祝い事や特別な時というイメージもあるが最近は普通に食事と共に楽しむという人も多いようだ。しかし日常的に飲む酒としてはいわゆる本当のシャンパーニュは高価である。その点ヴァン・ムスー(フランス)、スプマンテ(イタリア)、カヴァ(スペイン)などのスパークリングワインは比較的安価で750mlでも1000円前後からあるし最近はコストパフォーマンスの高い物も増えて普段着に楽しめる。
マリアージュ(料理との相性)を気にせず飲めるこの酒は何故かムードを華やかにする不思議な酒。「歌うワイン」「星を飲む」などと言われる理由が分かる気がする。映画の中でも色っぽいシーンでたびたび登場する。もっとも映画の中に出てくるのはさすがに本当のシャンパーニュだが、有名どころでは「君の瞳に乾杯」のカサブランカ、「お肉には赤、お魚には白、恋にはシャンパン」の昼下がりの情事、ジェームズ・ボンドが愛飲している007シリーズからプリティーウーマンまで。プリティーウーマンにいたってはヒットした年のクリスマスはホテルのバーはロゼシャンパンとイチゴのオンパレードだったらしい。だが私的には彼女(ジュリア・ロバーツ)にシャンパンを勧めておきながら自分は飲まずに「酒のない人生もいい」などと言って気取る彼(リチャード・ギア)の台詞は大いに気に入らなかったが(笑)。
恋人同士で飲むシャンパンもいいだろうが、仲間とワイワイ、例えば屋外パーティーやバーベキューなどでもギンギンに冷えたシャンパンは格別。少し汗をかいた後に流し込む辛口のそれはまさに至福の味。そして日常的に飲む泡もいいがたまには奮発して本物のシャンパーニュ。といっても高価な物でなくてもいい。私としてはマム社のコルドンルージュ、ランソン社のブラックラベルブリュット、ローランペリエ社のブリュットあたりをお勧めしたい。このあたりなら4000円前後で比較的探しやすい。でも一年に一度特別な日に清水の舞台から飛び降りたいという諸氏には迷わずサロン社のブリュット・ブランド・ブランをお勧めしよう。本当に良い年のブドウでしか仕込まず(プレステージ)しかもすべて手作業。1914年の創業以来わずか40ビンテージほどしかない贅沢この上ない泡。それゆえ幻のシャンパーニュと呼ばれる。私も数回しか飲んだ事はないが大げさに言えば神がかりな味?私などもこの世で一番愛する泡である。
という訳で世の中には色々な泡があるが赤白ワインもあわせて何世紀も前から愛され飲まれているブドウ酒。「ブドウ酒が無いところに喜びはない」という大昔の諺通り喜びと楽しさに満ち満ちた酒といえよう。「さて今宵はどこで泡とたわむれようか・・・。」




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